しばらく、誰も何も言わなかった。
希粋は俯いていた。
俺は掴んでいた希粋の腕を離した。
すると、すぐに今度は俺が希粋に腕を掴まれた。
え!?
びっくりして声が出ない。
「………一緒に、いてくれるの…?」
か細い声が聞こえた。
希粋は俯いていた顔をあげた。
「本当に、一緒にいてくれる…?」
泣きそうな顔をしていた。
さっきまでの凛とした態度は、もはやどこにもなかった。
「…いるよ」
「私、出来損ないで使い物にならないよ?……それでも、いいの?」
そんなの…そんなの、どうでもいい。
「…俺がお前を守る」
そうすれば、そんなことどうでもいいだろう?
すると希粋は嬉しそうに笑った。
「…月読希粋。『月華の乙女』としての任を負うことができなくなった、ただの人のなり損ないです。……ふつつかものですが、どうかよろしくお願いいたします」
こうして、希粋は俺たちと一緒に生きることになった。


