「俺は江戸を出る前、月影女神から希粋を頼むと言われた。そのときは馬鹿なと思ったが…出会っちまったからな。希粋、お前はここにいろ」
土方さんが、希粋を見て言う。
「母上が…?」
対する希粋は、顔をしかめた。
「…私はもはや必要ない娘…。何の目的もなく生きているだけの者です。どうか、このままお捨て置きください」
「いいや、それは許さねえ。お前は、俺たちと生きるんだ」
希粋の瞳に、強い光が宿る。
「戯れ言を…。そもそも、私とあなたがたでは生きている空間が違う。一緒に生きるなどできるはずがないし、私にそんな存在など必要ない。人間はそんなことも分からないのか」
厳しい口調で、俺たちを罵る。
だけど言っていることは…とても、悲しいことで。
「できる!」
俺は知らず知らずのうちに、そう叫んで希粋の腕を掴んでいた。
いきなりのことで、希粋の体が驚きで震えた。
「今、俺はお前に触れてる!たとえ同じ空間で生きてないんだとしても、触れることができるんだよ!」
だから、だから。
「そんな悲しいこと言わずに、俺たちといろよ…」


