月は華を煌めかせ


「…希粋が…『月華の乙女』…?」


「どうして、確かに髪と瞳は話に聞く通りだが…夜に目が見えないなんて、おかしいだろ!?」


みんなが、口々に言い合う。


「本当、なんだよな…?」


俺は希粋を見て聞いた。


「そうですね。一応、『月華の乙女』と呼ばれる存在です」


立ち上がり、なんの感情もない瞳をこちらに向けて希粋は答える。


「で、でも『月華の乙女』は夜目が効くはずですよね?それこそ景色が昼間と同じに見えるくらい…」


総司がうろたえながら尋ねる。


希粋は、総司を見た。


「普通ならば、そうなのでしょう。ですが私は正常の『月華の乙女』ではない、欠陥品です」


そう答える希粋に、総司は眉をひそめた。


欠陥品、という言葉にだけではなく、自分を見ている瞳が焦点が合っていないということも含めてだろう。


「…じゃあ、今日みたいに襲われたとき今までどうしてたんだ?」


どうやら希粋が襲われたのをみんな知ってるらしく、左之さんが聞く。


「見えなくても音は聞こえますから。一応神の娘なので、人間よりも聴力ははるかに優れています」


「いや、でも斬られたりしてたじゃねぇか、今日」


思わず聞いてしまった。


「…斬られても、すぐに治りますから」


そう言って、希粋は斬られた腕を見せた。


…確かに、さっき見たとおり傷痕は残ってはいなかった。


傷が消えていたことに驚いたけど、『月華の乙女』だったなら納得がいく。


…人ではない、神の娘だ。


希粋自身も、人間ではなく神と言っても間違ってはいないだろう。