にわかには信じられなかった。
それでも、俺と合わない視線が、事実なんだと告げている。
「でも…昼間は、見えてたよな…?」
見えていなければ、あんな風に剣を避けることなんてできない。
「なぜ、私が見えないと?」
希粋は土方さんに向き直って聞く。
「簡単なことさ。『希粋』なんて名前の女、そうそういないからな」
土方さんが、口角を上げて笑い、立ち上がった。
「……知っていたのですか、あなたは」
「ああ、知っている。…立て」
土方さんが、希粋の腕を掴んで立ち上がらせた。
希粋は逆らうことなく、どこか諦めた表情で土方さんに従う。
障子を開け、縁側に出た。
いつのまにか月は雲を通り抜け、静かに辺りを照らしていた。
みんなが縁側に出たところで、土方さんが希粋から手を離す。
いきなり支えを失った希粋の体は、その場にへたりこんだ。


