「…そうですか、手短にお願いします」


女の子は正座をして背筋をぴんと伸ばし、あくまでも凛とした答えをする。


「まず、お前は何者だ?」


「昼間にもお答えしたはずです。ただの旅の者ですよ」


「どこかに行く目的があるのか?」


「いえ、特にありません」


「女がひとりで、宛もなく旅ねぇ…。普通じゃまずねぇだろ」


土方さんの言うことももっともだ。


「私には、剣がありますので。普通の女ではありません」


「…まあいい。名前は?」


「……それは、聞かなくてもいいことではありませんか?」


あれ?


ここまですらすらと答えてきたのに、ここにきて答えないんだ?


さすがに名前は嫌だったのか…?


「…俺は土方歳三、壬生浪士組の副長だ」


「土方さん!?」


まさか土方さんが名乗るとは思っていなくて、俺は思わず声をあげた。


「俺は名乗ったぞ」


ニヤリと笑う土方さんを見て、納得した。


名前を聞くときは自分から。


たとえ女の子がそう思っていたとしても、名乗ってしまえば名乗らざるを得ない。


それにしても、土方さんがそこまでするって…。