…衝撃は、何も来なかった。


恐る恐る、目を開けた。


見えたのは、見慣れた背中だった。


まさに降りかかろうとしていた刀を受け、それを流す。


『…大丈夫?』


そう言って振り向いた顔は、笑っていた。


『早く逃げなさい』


それだけ言うと、守ってくれたその人は、再び前を向いた。


刀と刀が、打ち合う音。


刀が、体に入る音。


血が、飛び散る音。


怖くて怖くて、動けなかった体を引きずり、母親の所へ行った。


『見てはいけません、見てはいけませんよ…!』


母親は震えながら、何も見えないように、抱きしめた。


…見えなくても、あの恐ろしい音は聞こえていた。