自室へ戻り、女の子を下ろして布団を敷く。
布団の上に女の子を寝かせ…そこで気づいた。
「そういや、怪我してたっけ」
左の二の腕から、血が出ていた。
血くらいは拭ってやろうと思って、井戸へ行った。
「お、月出てきたな」
さっきまでは出ていなかった月が、はっきりと見えた。
でも雲が所々にあり、またすぐに隠れてしまいそうだなぁ。
「よっ…と」
桶に持って、自室に戻る。
手拭いを水に浸し、よく絞ってから傷口にあてた。
血は固まってしまっていて、うまく落ちてくれない。
どうすればいいのかなぁ。
これ以上やると傷が痛そうだし…。
もっと早く気づいてやればよかった。
そんなこと思っても遅い。
仕方ない、痛いかもしれないけど気失ってるし…大丈夫だろ。
「ごめんな~」
手拭いで少し強めにこすった。
おっ、落ちた…………え…?
嘘、だろ…?
俺は目を疑った。
そこにあるはずの傷は、なかった。
怪我なんてしていなかったかのように、最初から何もなかったかのように。
跡形もなく、傷は消えていた。


