整いすぎなくらい整った顔。
横髪を少し残し、頭の高いところでひとつに括った長い黒髪。
「…驚いたな、まさか女だったとは」
「よく言われます」
彼女はにこりと微笑み、言った。
「どうしてそんな男の格好をして…」
俺は思わずそう聞いた。
「…旅をするには、このほうが楽ですので」
返された言葉は、もっともな意見だった。
「確かに…」
ふと土方さんを見ると、何やら深刻な顔をしていた。
「……なぁあんた」
「はい?」
「あんた、もしかして……」
土方さんが何かを言おうとしたとき。
強い風が吹いた。
桜が、風に流され散る。
あまりに強すぎて、思わず目を閉じた。
…うっすらと開けた、その先に見たのは。
舞い散る桜を見上げた、無表情の彼女の横顔だった。


