「人間になりたいか……」
「……」
「ラウルと共に生きたいか……」
「……はい。
ラウルは俺にとって大事な人です。
きっとそれは変わらないと思います
ですが俺には神を裏切る事はできません」

神はしばし考えるとアレンに言った。

「ラウルは悪に染まってる。
それを助けられるのはお前だけだ……
お前が天使としてどうするべきか、
良く考えるのだ」

アレンは神にお辞儀をすると、
どうしようもない感情を覚えた。
神からも悪魔からも、ラウルを救えるのはアレンだけだと言われた。

しかし、悪魔は人間になることを薦め
神は天使として働けという。

「ラウル……」
あの時から姿を見ていないが
きっと美しくなっているんだろう。
アレンは急にラウルに会いたくなり、
セラに無断で人間界へと向かった。

夜の人間界は昼間よりも静かだ。
アレンが暫く町を歩くと、
奥から男が走ってきた。
男はやがて行き場をなくす。

「頼む命は助けてくれ!!!」

泣き叫ぶ男に近づく足音と
チャリチャリと軽い音を立てるネックレス
足音の正体はブーツで
音を立てるネックレスは十字架。

アレンは自分の目を疑った。
目の前に自分の妹がいる。
それも……血に染まった妹が……。

「ラウル!!!!」

アレンが呼ぶとラウルは振り返り、
キョロキョロとアレンを探す。
アレンが暗闇から姿を現し、
その姿を確認するとラウルは膝をついて
思わず顔を隠した。

「私は……今どんな顔をして
人を撃とうとしている?
アレンが来たと言う事はやはり私がしていた事は正義じゃなかったの……?」

ラウルはアレンに顔を見せた。
久しぶりに見る顔。
けれどもう似つかない顔。
ラウルの左目から右の頬まで大きく
刻まれた切り傷。

アレンは震えるラウルを抱きしめた。


「ラウル……俺がここに来たのはね……
決意を固める為なんだ。良かった……
思ったより早くラウルに会えて。
ラウルが悪に染まってしまったなら
俺も共に背負いラウルの罪を軽くしたい」