「アレイストよ……」
「はい。なんでしょう?」
「そろそろ……
アレン達を考えねばならぬな……
アレンにとってラウルにとって
なにが一番いいのか……考えねばならぬ」

アレイストは、顔をあげ声の主に答えた。

「神よ……私はアレンを立派な天使にしたいと思っております……
そしてラウルには立派な人間になってほしいと……」

すると神は、薔薇とリンゴを取り出して
それをくっ付けた。
薔薇の棘にリンゴが刺さり、
中から蜜が垂れる。

「アレンはラウルと
共に生きる事をどこかで望んでおる。
そしてラウルもアレンと共に生きたいと
日々私に願うのだ。今ラウルは
正義と言う名の悪に染まっている。
あのままでは、悪魔に唆されてしまう」

神は、それだけは避けたいのだと言うと
アレイストも渋々頷いた。

「この意味がわかるかい?アレイストよ
薔薇は確かに美しいが、茎には
恐ろしい棘がある。それに比べ
リンゴは、甘く時に苦くすっぱい。
まるで人間の生き様だ。
ラウルの心はまるでリンゴの様だ
時に甘く時に辛く時に弾む。
だが、その心は回りに、
かなり影響されやすい。」

その影響を与えるモノが
薔薇の様に強くかっこ良く美しかったら、棘が刺さり魅了されてしまうだろう。

神はアレイストにそう言うと、
辛そうな顔をした。

「長年、人間を見守って来たが、
ラウルにはなにもして
あげられなかった……
もはや手遅れなのかもしれぬ……」

神も匙を投げるとはこう言う事なのか
アレイストは悔しくて唇を噛むと
仕事を片付けて、魔界へ足を運んだ。