毎日聞こえる悪魔の声。
引き離された時の辛い過去。
全てが頭を巡りラウルを苦しめる。

「い……や……誰か……」
助けて欲しい時に助けを求めても
そんなに都合良く誰も来るはずなく、
ベッドで悪夢に耐える日々を送っていた。
鳥籠生活をしていたら
ずっとそうだと思っていた。
しかしここは違う。
ラウルの異変に耳を澄ませ
駆けつけてくれる仲間がいた。

「ラウル!?どうしたんだ!?」
「ペル……か……」

ラウルよりも少し幼さが残る顔立ちの
ペルは、幼く見えても剣術の達人。
その容姿で、悪人は特殊警察だと
気づかずに倒されて行く。

「すまない……
少し悪夢を見ただけだ……」
「そう?あんまり無理しないでね?」

ペルに背中を撫でられ少し安心した時
ラウルの脳に声が響いた。

《裏切っちゃえよ……》
《神は助けてくれやしないぞ?》

悪魔の声に耳を済ませてはいけないと
思うラウルだったが、
今回ばかしは負けてしまいそうだった。

「ラウル?」
「少し横になりたい……
心配して来てくれたのにすまないね……」

ペルの頬を撫でると
ペルは満足そうな顔をして部屋を出た。

「私は負けない……」

ラウルの部屋に飾られている薔薇の花。
あの花が再びアレンに
会わせてくれるような気がすると
ラウルは信じて、また眠りにつくのだ。

「神や、天使に助けを乞う訳じゃない……アレンさえ生きててくれれば……
私はそれだけで救われる」

ラウルのそんな気持ちに気づかず
アレンは目の前の光景にただ立ち竦んでいた。