アレンが眠ってから一週間が経ったある日


「アレンがいないと
少し寂しいっすね……」
「そうだな……
あいつはいつも問題を起こすからな……」

セラは、リキと共に、
赤い実……リンゴを食べて、
アレンの話をしていた。

『あっ!ズルイぞセラ!!
リンゴ俺も食べる!!』

そう言って忘却室から出てきてくれたらと何度も忘却室の方を見るのだ。
その様子にリキも心配し、時々話を振る。

「まだ眠りから覚めないんすか?」
「ああ……。時間が掛かってるらしい。」

アレンがラウルを忘れても
ラウルはアレンを忘れない。
もし、またアレンが人間界に行き
ラウルと出会っても、
アレンはきっとキョトンとして
「誰?」と微笑むのだろう。

「あいつさ、人間界行って
酷く赤い花を見てるんだよ。
棘のある花……」
「赤い花で棘がある?薔薇って奴っすね!
あれ綺麗っすよね!」

「それをあいつさ、薔薇は俺みたいって
言ったんだぜ?」
「あー確かに似てるっす!
すーぐ怒って赤くなるから!似てるっすよ」

セラは少しむすッとした後に
「そんな他愛もない会話さえ
大事にしておけば良かったな……」と
呟くとリキに思い切りリンゴを
投げつけられた。

「痛っ!なにすんだ急に!」

プルプルと震える手の奥に
リキの涙が見えた。

「弱音吐いてるセラ天使長みたら
アレン困っちゃうっすよ……
威厳があって、他の天使の見本になってるセラ天使長を誰よりも
誇らしげに自慢してたのは、
アレンっすよ!!!」
「なっ……」
「今のセラ天使長は、
全然かっこ良くないっすよ……
リンゴご馳走様でしたっす……
あとリンゴ投げ付けて
すみませんでしたっす」

リキはそう言うと
セラを置いて寮に帰ってしまった。

「俺……部下にも嫌われて、
どうすればいいんだよ……アレン……。」