「見えるわ!
綺麗な黒髪に綺麗な白い羽!!
瞳の色は綺麗な海色!」

アレンは、天界で人間と
触れ合ってはいけないと教えられた。
そもそも人間は天使が見えないのだから
触れ合うもなにもないと思っていたが、
見える者も居るのかとアレンは驚いた。

綺麗な金髪。
綺麗な緑色の目。
自分とそっくりな顔。
そして出会った時に感じた、
懐かしい気持ち。

「それに、私達驚くくらい似てない?」

そうだ、こんなにも似ているのに
他人だとは思えない。
だけど、彼女は人間でアレンは天使だ。
その違いが、二人は他人だと物語る。

「驚くくらい……似てるけど
俺は天使で君は人の子だ……。
俺の妹の名前もラウルって言うんだ……
死んじゃったけど……」

天使の消滅は人間で言う死。
ラウルに分かりやすく説明する為に
アレンは“死んだ”と言った。

「ねぇアレン?
この出会いはきっと偶然じゃないよ!
きっと運命なんだよ!
だから暫く私の家で休まない?
その怪我じゃ飛べないんでしょう?」

ラウルは、優しく微笑むと、
アレンの手を握った。

「アレンは神様の使いでしょ?
なら……触れても平気よね……?」


アレンの頭の中では
断って回復するまでココに待機し
飛べるようになったら天界に一人で戻ると言う選択肢と、
回復するまでラウルの家で待機し
飛べるようになったら天界に一人で戻ると言う選択肢に攻められていた。

人間と触れ合ってはいけない。
それはきっと人間と関わりを
持ってはいけないと言う事だろう。
天使は、人間を見守り時に助言し
人間に憑く悪魔を退け、
神の命令に逆らわず尽すのが使命。

今ここにセラがいたら
こんなに悩む事もなく、
今回ラウルに出会ったのは単なる偶然で片付けられたかもしれないが、
もう、アレンにはラウルが他人だとは思えなくなっていた。

「じゃあ暫くお邪魔しようかな」

この選択肢で歯車が狂い始めた。