奈々が、あたふたと傘を押し返してくる。

「良いよ。大丈夫。風邪ひきそうな女子を見捨てれないし」

俺は冗談っぽく笑って言ったが、奈々は相変わらず首を振るばかりだ。

「…じゃあ…一緒に帰る。…これで良い?これなら二人とも濡れないし」

俺の最高級の勇気だ。

「…り、理久が嫌じゃないなら…私は良いけど…っ」

なんと、奈々から了解が得れた。

思わず声を漏らしそうになったのを堪えて、俺は奈々の横に並んだ。

「…バカだね、私。…午後からは雨が降るって、朝にテレビで見てたのになぁ…」