「…じゃ、頼んだよぉ。俺、今からちょっと抜けるから」

店長は俺の肩をポンっと叩くと、部屋を出ていった。

「よ、よろしくお願いしますっ」

改めて彼女は頭を下げてきた。

「あ、そんな緊張しなくて良いよ!俺は早瀬理久。よろしくね」

俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに笑った。

…この奈々の様子なら、俺と奈々は初対面みたいだ。

記憶喪失の前からも、俺と奈々は知らない人同士だったのだろう。