「頑張って思い出さなくて良いよ。…大丈夫。…大丈夫だからね…」 医者の言葉が、やけに頼りなく聞こえた。 「…でも、この子…『奈々』って言いながら起きましたよね?」 医者の横に立つ看護師が、首を傾げながら呟いた。 「…確かになぁ…。…その[奈々]って子について、何か覚えている事はあるかい?」 さっきは『頑張って思い出さなくて良い』って言ったのに、ちょっと矛盾してる。 …なんて考えたところで、しょうがない。 俺は暫く頭の中で、奈々という単語を巡らせていた。