それを見た医者らしき人が、顔色を変えて俺の顔を覗き込んできた。

「…もしかして…自分の名前が分からなかったりするかい…?」

…名前?

何、バカな事を聞くのだろうか。

…自分の名前なんて分かるに決まって…、

「…え?…アレ…名前…?俺の…名前…?」

全く思い浮かばなかった。

「…嘘だろ…。…名前が…分か…ぅっ」

記憶を巡らそうとすると、頭に激痛が走った。

俺が呻くと、医者が慌てたように両手を横に振った。