「翠ちゃんは彼氏居ないの?」
いきなり矛先が自分に向いて、私は固まった。
「い、居ないです」
「それこそ勿体ない。モテそうなのに。ってか、モテるよね?」
「いや、全然……」
辻さんに見つめられて、顔の中心に熱が集まる。
……ヤバい、かも。
「はは、真っ赤。翠ちゃんって結構照れ屋さんだよね」
「からかわないでくださいよ……」
「いやぁ、可愛い可愛い」
ああもう、駄目かも。
面と向かって可愛いなんて、……そんなの、ズルい。
「翠ちゃんってさ、もしかして俺の事好きなの?なんて……」
「…………!」
「…………ね、冗談……」
軽い感じで、ほんのジョークのつもりで言ったのだろう。
辻さんは私の顔を見て、そのままフリーズした。
………自分が今、どんな顔なのかわからない。
だけど、辻さんの動きを止めてしまうくらいには、分かりやすい顔だったのだろう。
「………翠、ちゃん?」
「そ、んなわけないじゃないですか」
「あはは、だよねー」
「そーゆーの、セクハラですよ」
「ん、ごめん」
辻さんは気まずそうに目を泳がせた。
それから、テーブルの上のお冷やを私の方に近づけた。
「……顔、めちゃくちゃ赤いよ」
「…………知ってます」
「冷やせば?」
「………はい」
コップを受け取って、ほっぺたに近づける。
ひんやりして気持ち良い。
何て言い訳すれば良いのかわからない。
何か言わなきゃ、って思うのに、言葉がちっとも出てこない。