卒業式は、とっても良い天気だった。


あたしたち四人(下足含む)は、下級生代表として、上級生を送り出す。


「設楽卓(すぐる)」


先輩の名が呼ばれると、体育館の温度が上がる。


温暖化に貢献しているのはあたしも同じわけで、卓って名前だったんだと思う反面、やっぱりカッコいいと思った。


胸の奥んとこが、むず痒い。


卒業証書を貰って壇上を下りる先輩。


席に戻ると、体を屈めて前髪を直している。パイプ椅子のパイプの部分を、鏡に見たてていた。


きっと先輩は、あたしたちが見つめるその目にうつる自分を見て、確たる信を得たいんだ。


そんなことしなくても、大丈夫なのに。


その言葉を、伝えることはできなかった。


もう、お別れだから。


そして次は、あたしたちが、向こう側に立つ番だ。


ハマチとゴリ江と下足と、その他諸々の学生生活ってやつが、大海原に勢いよく投げ出される。


別れが、くる。


否応なしに、変化が襲ってくる。


そう思うと、痛いくらいに切なかった。