「でもさ、王子はあんたがいいって言ってるんだから気にしなくていいんじゃない?」



「それすらも、わかんないんだよ」



え?って驚いたような顔をする美帆に、目を向けているのが辛くなって


飲んでたオレンジジュースに視線を移した。




「お互い、急に決ったことだからまだ手探り状態なんだ。壱斗のいいところはいっぱい知ってる。でも、好きかって言われたらわかんなくて」



“好き”って言われたこともないし、もちろん“好き”って言ったこともない。



二人の確実な“気持ち”があれば、こんな不安に襲われることもないのかもしれない。




「そっか……とりあえず王子を信じるしかないのかもね」


「うん…そうだね」



「私、そろそろ行くね」


「また斎藤さんと?ラブラブだなぁ〜ッ」


「ハハッ。まぁね」




バイバイって手を振って、オレンジジュースを飲む。



それで、考えてみたんだ。



もしも、結婚相手が壱斗じゃなかったら。




たぶん不安ばっかりで押し潰されそうになってただろう。


知らない家。


知らない人達。


知らない人と一緒の部屋で寝る。



そんなこと、壱斗じゃないと絶対にできなかった。



壱斗が、優しさで包んでくれてたんだ。



なのに今は、その優しさが痛いよ……



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