「ここは……嘘の家」
親友にも言えない私の秘密。
「嘘、の…家…?」
斎藤さんはさすがに困惑している様子。
「そう、ほんとはまだ先なんです」
「………」
星が、哀れな私を見下ろしている。
斎藤さんは私の一歩斜め後ろを歩く。
今、どんな顔してるのかな…?
見るのが怖い……
「ここです」
「え……」
斎藤さんが驚くのも無理はない。
私が指差したのは、一番上が見えないぐらい高層の、超高級マンションだったから。
「そう、ですか…では、僕はこれで」
「待って!」
無意識に呼び止めて、私は何がしたかったのだろう?
“そばにいたい”なんて、純粋な気持ちじゃなくて
寂しさを埋めてほしいという欲望。
私はこの、大好きな人までも利用するの?
そんな自分に吐き気がする。
それなのに、口は止まらない……
「コーヒーでもどうですか?送ってくださったお礼に」
「あ、でもご家族は……」
「一人暮らしなんです」
「え?」
斎藤さんはまたマンションを見上げる。
“こんな所に一人で?”そう言いたいんだろう。
「じゃぁ……、お邪魔します」
何も言わない優しさに、私の心は締め付けられた………
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