「ありますよ?ただ、自分が自分でなくなるような、そんな恋はしたことがない」
落ちてきた太陽の光が斎藤さんの横顔を照らす。
その横顔はどこか寂しそうだった。
“彼女なんて必要ない”
そんなこと言ってたけど、本当は恋したいんじゃないかな。
「斎藤さん、ほんとは恋したいんでしょ?」
「そんなもの必要ありません」
あう。せっかく本音に近付けたのに。
戻っちゃった……
「さ、着きましたよ、姫乃様」
「はぁーい……」
ちぇ。斎藤さん、また仏頂面だ。
まぁ、でも。
美帆の好きな人は斎藤さんってわかったし。
斎藤さんも実は普通の人間だってわかったし。
今日はいい日かも。
「あ、姫ちゃん。お客様だよ」
「へ?私に?」
リビングの扉から、雅斗様が顔を覗かせる。
その足元に………
「陸?!空?!」
「姫姉ちゃん!」
「なんでここにいるの!」
「お姉ちゃんに会いたかったから」
かーわーいーいー!!
陸と空は、私の双子の弟。
今小学二年生で、すっっっごく可愛いの!
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