いつの間にか、涙が零れて止まらなくなっていた。



「ありがとうございます……ありがとう…」


「いいえ…また私を頼ってね」


「はい……」



田村さんの細いけれど温かい手が頭に置かれて、心に温もりが染み渡る。


「迎えに来たみたいだから帰りなさい」


「へ…?」


声を出したと同時に扉が開いて、綺麗なシルエットがうつし出される。



「姫乃?!まだ帰ってなかったのか?もう6時だぞ?!って、なんで泣いてるの?」


「なんで壱斗がいるの…?」


「部活終わって外出たらうちの車があったからもしかして姫乃まだいるのかなって思って…」



「ほぉ~、大事にしてるね。」


「う、うるさいって美園!姫乃、帰ろう?」


「はい…」




壱斗に手を引かれて、教室を出る時に見た田村さんは


穏やかに微笑んでいた。



そんな彼女は、今まで見たどんな人より








綺麗に見えたんだ……












「なんで泣いてた?」


車に乗ると壱斗は少しネクタイを緩めた。


走って探してくれてたのか、汗が光ってる。



「ごめんなさ…」


「何が?」


「心配かけて…」


「あぁ、そのこと?そんなのいいって」


結婚やめるって言われるのかと思った、って笑う壱斗。


この人の隣なら、幸せを掴める。





この時は確かに、そう思ったんだ。



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