「姫乃は?ってか?」
「………」
「姫乃とはもう、会わないよ」
………は?
二人は付き合ってるんじゃないのか?
「遠くに行くんだ」
息が、止まった。
誰が?
姫乃が、だよな?
「なん、で…」
「親の単身赴任に着いて行くらしい。もう、ここには戻ってこないよ」
「………っ」
俺に、傷つく権利なんてない。
だけど、気付いてしまったんだ。
自分にとって、何が一番『必要』か
ずっとわかっていたはずなのに
感覚が麻痺していた。
自分にとって、何が一番『必要』か
誰が一番自分を『必要』としてくれているか
全部わかっていたはずなのに、俺はそれを見失っていたんだ。
ガタンと椅子を倒して立ち上がる。
隣に座っていた美和さんは驚いた目で俺を見た。
「壱斗さん…?」
「ごめん、美和さん。俺、美和さんとキスしたくなかった。できなかった。」
「え?」
「彼女の顔が、ちらつくんだ」
俺がキスしようとすると、真っ赤な顔で目を瞑る。
その顔が可愛くて可愛くて…
いくらキスしても足りなかった。
ずっとキスしていたいと思うほど、溺れていた。
*

