「俺が壱斗にあんなことを言わなければ、二人はきっと今も幸せだったよな……」
「……違うよ」
それはきっと違う。
「私がもっとちゃんと壱斗を支えてあげられたら……」
そう言った瞬間、私の唇が雅斗さんのもので塞がれていた。
「姫ちゃんはほんとに……、全部自分のせいにして……強いよなぁ」
「雅斗さん…」
「俺さ、初めは壱斗への償いのつもりで二人を密かに咲華から守ってたんだ。壱斗が自ら選んだ初めての女の子だから、きっと壱斗は姫ちゃんのことすごく好きなんだろうなって思って」
「………っ」
「でも、いつのまにか……好きになっちゃってた。姫乃はいつも誰かを責めるんじゃなくて自分を責める。それは誰にでもできることじゃない……あぁ、なんて強い娘なんだろう。そう思ってたら、姫乃から目を離せなくなってた」
「雅斗、さん…」
「好きだよ、すごく。少しずつでいいから、俺を見てよ……」
……こんな風に
少しずつ少しずつ雅斗さんを知って
少しずつ少しずつ壱斗を忘れて
少しずつ少しずつ雅斗さんを好きになってゆく。
それがいいのかも知れない。
だってもう、大好きだったあの腕は、ここにはないのだから……
*

