ある日、壱斗は俺に言った。
「どうして、おとうさんとおかあさんはぼくをつれていってくれないの?雅斗お兄ちゃんと史斗お兄ちゃんだけなの?」
その時、俺は壱斗に対する嫉妬でいっぱいで
両親に優しくしてもらえる壱斗が羨ましくて
言ってしまったんだ。
壱斗の心に陰を落とし続ける、最低の言葉を……
「愛してないからだよ……」
「え……?」
「お前はお父さんとお母さんに愛されてないんだよ!」
その時の壱斗の絶望を見たような瞳は
今でも俺を咎め続ける。
それから、壱斗は泣かなくなった。
両親と俺と史斗が出かける時、笑って手を振るようになった。
きっと諦めたんだ。
愛を、もらうことを……
壱斗が偽物の笑顔を作ることに慣れてきた時
俺は衝撃の事実を知った。
『壱斗と咲華が、身体の関係を持ってる……』
史斗の口から聞いた時、とても驚いた。
だって、壱斗はまだ中学生になったばかりだったから。
当時、咲華はうちの使用人で、親に捨てられて斎藤と一緒に親父がうちに住まわせることにしたのだった。
壱斗は寂しさを、咲華との行為で埋めていた。
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