「もうちょっと…イチャイチャしてたいとこなんだけどさ、姫ちゃん」


雅斗さんが申し訳なさそうに言う。


「……たぶんもう、学校行かないといけないよね?」



………え?


勢いよく起き上がって時計を見る。



は、8時……?!


「キャー!!」



ドタドタしながら準備を始める。



「思ったより元気そうでよかった」


雅斗さんが、優しく呟いていたことにも気付かずに。













「行ってきます!!」


なんとか準備を終え、ドアを開けようとした時


フワッて雅斗さんの香りがしたかと思うと、後ろからギュッて抱き締められた。



「ま、雅斗さん……あの、学校……」


「…壱斗、いんじゃん…」


「……っ」



そうだ


学校には、壱斗が……



「行くな……」


「雅斗さん…」



雅斗さんの温かい息が耳にかかる。


嫉妬


温度


すべてが私の心を溶かしてゆくの……



その時


雅斗さんはパッと腕を離して、私を解放した。



「なんてうっそー!送ってくよ。ここから学校、どうやって行くかわかんないだろ?」


「え、あ…」


急に変わった雅斗さんの態度。


でも顔、真っ赤だよ……?



*