「雅斗……」
「ん?」
「傷つけてごめんね。手放せなくてごめんね」
「涼子さん……」
「後悔しないように。好きな娘にあなたのすべてを見せなさい」
涼子さん。
あなたはほんとにいい女だよ。
今だって、泣きたいくせに。
俺を引き止めたいくせに。
『一人にしないで』って心の中で叫んでるくせに。
……でもごめんね。
もう俺はあなたに何もできないよ。
姫乃が好きだから。
人の闇に気付いて
光を与えられる、あの娘が。
弱く見えるけれど
ほんとは強いあの娘が。
どんな時も
無邪気に笑うあの娘が。
大好きだから。
「さよなら、涼子さん」
俺はそう言って、彼女の手を離した。
そして歩きだす。
後ろを振り向かずに。
たぶん、泣いてるんだろうな。
誰にも見つからないところで、ひっそりと。
あなたに言われたように、後悔しないように全力で彼女に向かうよ。
「姫ちゃん、好きだよ」
俺とあなたの思い出の部屋の
ベッドで泣きながら眠る、彼女に。
*

