『壱斗を好きでいるのが苦しい』


彼女の言葉が、涙が


頭を掠めてまた胸が痛くなる。



俺ならあんな顔させないのに……


ありきたりな言葉だけれど、ほんとにそう思うんだ。




だから俺にはしなければならないことがある。


そう、アノ人に……










「雅さん、どこ行ってたんすか!」


店に戻ると、後輩が声をかけてきた。


仕事中に急に消えたんだもんな…


そりゃぁ、焦るよ。


悪いことしたな



「ごめん」


そう微笑むと、ソイツは顔を赤くした。


この笑顔も。男も赤面してしまうほどの笑顔も


彼女が教えてくれたんだ。




話しかけてくる咲華や他の客を無視して俺が向かったところ。


そう、今の俺を作ってくれた彼女の元。




「……涼子さん」


「雅斗」



俺は、この笑顔が大好きだった。


そう、俺が愛した人




「涼子さん、話があるんだ」


彼女の前に跪いて、手を取りキスをする。


……綺麗な手


姫乃の手はもっと小さくて、プヨプヨしてたっけ。


そんなことを思い出して、少しだけ笑みがこぼれた。



「…俺、もう涼子さんに会えないよ」


彼女を見上げると、俺の頬を撫でて微笑んだ。



「そんなに悲しい顔しないで」


ねぇ、涼子さん。


あなたはほんとに



いい女だったよ。




*