今、私はさっきの人と二人で近くのカフェに来ていた。
美帆は来ると言っていたけど、斎藤さんとデートだから無理やり帰した。
それにこの人、悪い人じゃなさそうだしね。
「俺、秋山宏っての。恐がらせてたみたいで、悪かったね」
「あ、いえ…」
秋山さんは優しく微笑んでコーヒーを飲んだ。
……どことなく、壱斗に似てる気がした。
柔らかい雰囲気、それでいてどこか寂しそうな…
「君は姫乃ちゃん、だよね?」
「はい…?」
なんで知ってるんだろう…?
「ハハ、なんで知ってるかって?」
「……はい」
「麻生の家の前でさ、壱斗が君を“姫乃”と呼んでいるのを聞いたんだ」
「……え?」
壱斗のことを知っているの?
なんで……
「俺さ、昔から麻生の家に出入りしてたんだ。まぁ、俗に言う幼なじみってやつ」
まただ。
また、寂しそうに笑った。
「史斗……、元気にしてる?」
その笑顔を見て、思わず聞いてしまった。
「どうして、そんなに泣きそうに笑うんですか?」
「………ッ」
きっと、この人は
心の中で泣いてる。
そう感じたんだ。
「ハハっ……壱斗が、君をあんなに優しい瞳で見てた理由がわかった……あの、壱斗が」
………え?
「君は、俺が昔好きだった人に似てるんだ。……とても、愛してた人に」
憂いを含んだ瞳は
どこまでも優しかった。
*

