「壱斗〜帰り、ゲーセン寄らね?」
部活終わり、妙にご機嫌な尚が声をかけてきた。
……こういう時の尚は多少欝陶しいからシカトシカト。
スタスタ歩き出した俺に、尚はまだ何か言っていたけど
すぐに諦めたのかマネージャーの女の子に声をかけていた。
……てか、お前彼女いるじゃん。
ま、いっか。
今日は参考書を見に本屋へ行く予定。
本屋へ行く途中、見慣れた後ろ姿を見た気がした。
「史兄……?」
驚いて、二度見してみてもやっぱり史兄で。
え、なんでこんなとこに…
だってここは
ホテル街。
史兄には似合わない場所。
よく見ると、隣には史兄に寄り添う女性がいた。
え…………
なん、で…………
軽くウェーブした髪
すらっと伸びる白い足
そう、それは
あの日よりもずっと大人になった彼女で。
カタン
音を立てて俺の手から鞄が落ちる。
その音に史兄が振り向いて、立ち尽くす俺を見て
笑った。
そして、彼女の手を引き、ホテルに入って行く。
なんで?どうして?
心臓が嫌な音を立てる。
あの後ろ姿は、絶対に
「咲華さん…」
見間違うはずのない、彼女の背中。
*