「わ、私…そんな顔してた?」
「うん。あさからずーっと。」
「嘘……」
「…はぁ」
「ぶッ!!」
さっき買った熊のぬいぐるみを、顔に押し付けられた。
え……苦しいんだけど?
「うぁきほふん…?」
「なけばー?」
………え?
もしかして……
「だれにも、みえないから……」
明斗くん……
「う、うぇ……」
ぬいぐるみの毛が、顔に当たってくすぐったい。
こんな道端で
小さい男の子にぬいぐるみを押し付けられてる私は
周りからはどう見えてるんだろう?
でも………、
気になんないぐらい
不安で………
ねぇ、壱斗
咲華さんって誰?
どうしてあんな顔してたの?
壱斗に聞きたいこと、
不安に思ってること、
全部が涙となって流れ落ちる。
「明斗くん、ぬいぐるみ濡れちゃうね、ごめんね……」
「べつにいいって。またかえばいいから」
「うッ…うぐ…」
明斗くんの優しさに、また違う涙が出てくる。
*

