なんかもう、頭がおかしくなりそうだ。
姫乃が、雅兄と。
俺の、兄貴と。
「ハァ……」
「壱斗?」
「ハァ、…ハァハァッ、ハァ」
「壱斗!美園!美園こっち来い!壱斗が!!」
急に呼吸が苦しくなって
尚の声が少し遠くに聞こえた。
助けて……
助けて……
「壱斗!壱斗、大丈夫!私もいる!尚もいる!私達には壱斗が必要なの!必要なの!」
美園のその言葉に
手放しかけていた意識をもう一度手繰り寄せた。
「壱斗!!」
「ッ、あぁ、ごめん。……もう、大丈夫…」
久しぶりだな、こんなこと。
“あの女”がいなくなってから、こんなことはなかったのに。
……あぁ、そうだ。
戻ってきたんだ。
“アイツ”が、俺の意識の中に。
「アイツ、姫乃のこと……聞いたんだって」
「アイツって……まさか……」
美園と尚の瞳が見開かれていく。
いろんなことが、一気に起こりすぎて
わからなくなる。
俺にとって、一番“必要”なものは?
俺を一番“必要”としてくれる人は?
“姫乃”なんだって、わかりきってたはずなのに………
わからなくなる。
*

