「斉藤さん、斉藤さんっ!」

自分の名前を呼ぶ甲高い声にビクッとなる。
思わず背筋が伸びた。

「は、はいっ!」
どもるクセも昔から変わらない。

「大丈夫ですか? 聞いてますぅ?」
イラつきながらも、小首をかしげる仕草は忘れないこの女は確かもうすぐ30になる。

「はい。あの、ごめんなさい。また何か?」

私よりずっと年下の同僚から仕事のミスを指摘されることなんて、日常茶飯事。

普段はほとんど無視されている。

この女が私に話しかけてくるときなんて、たいてい私がミスをしたときだ