「こんなに穏やかな海を見ていると、
反対側の海であんな恐ろしいことがあっただなんて、信じられないくらいです」

「……」

「あの震災から、『海はいいよなぁ』なんて言ってはいけないような気がしてますけど、海が我々に与えてくれたものも、はかり知れないんですよね」

「そうですね」

「早く退院して、また仕事しなきゃ!」


そう言って、遠藤さんがこちらを見たので、私は慌てて目を逸らした。