「…ごめんな。ずっと、傷ついてたんだろ? 俺、図書室でもヒドい事したしな…」


先輩に背後から抱き締められた時の長い髪じゃなくなった私の髪を指に絡ませて遊ぶ。


「あの男って、里莉にとって大事な男なの?」


「…あの人は、私の兄さんなんです」


正直に答えて、先輩の顔をチラッて見たんだけど、何だか納得のいかない顔。


どうして、そんな事聞くの?



「兄さんも私も、香輝は全員母親が違うんです。兄さんと香輝の母親は本妻なんです。前妻と後妻ですけど…。私だけ、望まれた子供じゃないんです」



幼い頃の記憶はヒドいものだった。


いつも暴力を受けて、餓死寸前で…時々、近所の人から哀れみでご飯を食べさせてくれた。




あの時、お母さんは精神的に壊れていたんだと思う。





殴られたかと思いきや、まるで人形遊びのように優しく頭を撫でてくれる。