彼の腕の中。
想像だけなら、何度そこに行っただろうか。
自分が憧れ続けた場所にいる実感が欲しくて、あたしも必死に腕を伸ばし、彼の背中に回した。
「積極的じゃん」
「……そんなんじゃ……ないです」
そう言いつつも、普段から大人しいあたしにしては、ありえない大胆な行為。
この場所だから出来た。
どうしてか、今日の社長はあたしを受け入れてくれるような、そんな気がした。
それが気まぐれだったとしても……抱きしめられているこの時を失わないよう必死だった。
「今日は覚悟しとけよ」
「……はい」
「あ、はいって言った?俺何するか分からないよ?」
「何でもしていいです」
「そう、そっちがその気なら……」
あたしの答えを聞いた瞬間、社長はくすりと笑い、自分の唇をあたしの唇に重ねた。
かるくついばむ様に、何回もなぞる。
あたしの体は、その度に跳ね上がる。
それを見て社長は楽しそうに肩を揺らす。
これから先、あたしは一体どうなってしまうんだろう。
答えは見つかりそうにない。
ただ分かっているのは、全身から溢れ出る彼への想いと、指先が触れる度に電気が走ったように震える体と、同じ時間を共有しているという事実だけ。

