玄関から、部屋の奥は見渡せない。
けれど、一人暮らしの社長には広すぎるんじゃないかと思うくらいの豪邸であることに間違いない。
部屋の中には、社長が好きそうなセンスの良い絵や置物が随所に置かれ、嗅いだ事のない不思議な香りが漂っていた。
物珍しさにきょろきょろとしているあたしに、
「気になるなら、勝手に探検していいよ」
そう言うけれど、首を横にふるふると振ってお断りをした。
勝手に探索など出来るはずがない。
うっかり触って壊してしまったら、私の給料で弁償できるだろうか。
その間、ごそごそとキッチンの奥から何かを掘り出していた社長。
「これだろ、探してたの」
と手渡されたのは、ビンテージのワイン。
あたしが、来週に控えた雑誌の取材までに、用意しなければいけなかったもの。
本来ならあたしが手配をしなくてはいけなかったもの。
けれど、どうしても見つけられず、それを報告したあたしを社長が今こうして家に連れてきた、というのがことの次第だ。
資料か何かを渡されるのかと思っていただけに、驚きで言葉もでない。
まさか、社長自らが所持していたなんて、さすがとしか言いようがない。
手の中のボトルを眺め、思わずため息が漏れる。
滅多に手に入らない、貴重なワイン。
きっとこんなものが、あのキッチン奥にあるワインセラーにはわんさか眠っているんだろう。
「さて、と」
社長が急に、にやりとした。
そしてあたしの手からワインのボトルを奪い取る。
「どうしたんですか……ちょっと……社長!?」

