これまでに、何度となく目にしてきたその指輪は結城家の正式な婚約指輪で。

絶対に失くさないようにと、ネックレスに通してずっと肌身離さず着けていたマリアの大切な宝物。


今日12月24日は、その指輪を魁から受け取った日だが……

五年前、兄さんと魁がある約束をした期日でもあった。



俺達の目の前で、マリアの左薬指に婚約指輪を嵌めた魁。


「今日こそは、納得してもらわないと困りますからね」


指輪に口付けを落とすと、俺達…と言うよりは兄さんに向けて爽やかな笑みを見せる。

何と言うか……

ここまで怯む事無く兄さんに向かっていけるなんて、尊敬に値するよ。


俺には絶対に、真似出来ない。

此処から見える兄さんの蟀谷には血管が浮き出ていて、周囲を凍てつかせる空気を醸し出していた。