次の日は、生物の授業の前に、英語の勉強をしていた。

今までは、授業前はたいてい先生と話していたのに。

寄せ付けないオーラを出そうと思って。


いつもの私の勉強の仕方。

A4の紙を4つに折って、小さくしたものに、これまた小さな字で書き続ける。

そうすると、覚えるんだ。


そんなことを黙々とやっていた私。

すると、川上先生が近付いてきた。



「何だ、カンぺでも作ってるのか。」


「……。」



無視。

無視だよ、晴子。


自分に言い聞かせて、英語に集中する。

ほんとは、全然集中なんてできていないくせに。



「英語か。」


「……。」



だんまりを決め込むと、先生は去って行った。

私は、泣きたくなってしまう。


春に先生を好きになって、これまでいろいろ努力してきた。

先生に近づきたくて、いつも。

話しかけたり、待ち伏せしたり、質問に行ったり。


そして、字を綺麗に書いたり、髪の毛伸ばしたり、リボン付けたり。

ヘアコロン付けたり、色つきのリップ買ったり。


そんないろんな努力は、全部先生のためだったのに。

先生に振り向いてほしいから、頑張っていたのに。


こんな形で、先生に背を向ける日が来るなんて、思わなかった。


先生に、助けられたこともたくさんあったのに。

泣きそうな時、笑わせてもらったこともあったのに。


勝手に傷付いて、勝手に怒って。


こんなふうに、先生を無視する私も、最低―――