夏休み中は、倉木先生と短歌メンバーで集まって、何度も練習をした。

本番は、お題が出されて、決められた時間内で歌を詠む。

そして、壇上で2チームずつ対戦していく。

倉木先生がお題を出してくれて、私たちはいつも歌を詠んでは評し合っていた。


そして、迎えた本番の日。

2泊3日で、東北へ向かう。

私は緊張して、ご飯も食べられないくらいだった。



「はるちゃん、大丈夫?」


「大丈夫です。これがあるから。」



ボストンバックから出したのは―――



「何それ、化学?はるちゃん、ここに来て勉強する気?」



みんなに白い目で見られる。



「違うよ。これ。これを見れば私、頑張れる!」



この間、川上先生に質問をしたページ。

そこに残った、先生の几帳面な文字を眺めて、私はにやにやする。



「何それ、誰の字?」


「……内緒ー。」


「誰よ!」



みんなに突っ込まれて、にやにやしていると。



「川上先生でしょ。」


「……えっ、どうして。」


「分かるよー。いっつも仲良さそうだもん、はるちゃんと川上先生。」



倉木先生……鋭い。



「え、晴子は川上先生に化学聞いたわけ?」


「うん。」


「だって川上、生物の先生じゃん。」


「うん!」



友達に突っ込まれても、私は笑顔で頷く。



「何で?え?晴子、」


「だって、川上先生好きだもん。」


「え、えええーーー!晴子、あのおじさんが、」


「おじさんじゃないよ。先生の心はいつも、少年のようで……」


「はいはい、分かった!」



みんなにさえぎられても、川上先生がいかにかっこいいかについて語る私。

そんな私を、倉木先生はにこにこと見つめていた。


私は、川上先生を好きな気持ちを、誰かに隠そうなんて思わなかった。

みんなが知っていたっていい。

だって私は、川上先生が好きだと、胸を張って言えるから。


こんなにも、人を好きになったのは、初めて。

そのくらい、先生のこと、大好きだったから。



先生に、いい結果を持ち帰るためにも頑張ろうと思って、私は東北へ向かった。