本当は、というと。

お父さんのこと知って、ちょっとショックだった。


やっぱり、お父さんは生きていた。

その事実を、隠していた母をひどいと思った。

だけど、それは決して、決して口にしてはいけないことだということも、分かっていた。


だから、私は必死に感情を封じ込めた。

今まで通りの私でいようと思った。



「はるー、お母さんの洋服ダンス、いじった?」


「え―――」



だから、母にそう問われた時は驚いて、声が裏返りそうになった。



「知らないよ。」


「ああそう。じゃあおばあさんかな。」



焦っていた私に、母は気付かなかった。

さらっとその話題は流れて、私は心の底からほっとした。

アルバムを見た上手い理由が、思いつかなかったから。

お父さんのこと、もう全部知ってるなんて、言えなかったから。


その日以来、私はお父さんのことは忘れようと思ったんだ―――