センセイの白衣

その後、しばらく夕子と生物講義室で勉強していたね。

寂しさが、足元から這い上がってくるみたいだった。


この生物講義室で、先生から、たくさんのことを教えてもらった。


2年生の頃は、毎日が馬鹿みたいに楽しかった。

それは、先生のおかげだよ。

生物の授業は、高校時代の何よりも、楽しかった―――


3年生になって、担任でもないのに先生は、たくさん相談に乗ってくれて。

この生物講義室で、先生と話したときもあった。

私のために、みんなを怒ってくれた日もあったね。

ここにいるときは、いつでも私は、川上先生に守られていた。


嬉しい時も、楽しい時も。

悲しい時も、切ない時も。


この生物講義室に来れば、先生が。

その包み込むような広い心で、受け止めてくれたね―――



足音が聞こえて。

ドアが開いた。


ちょっと振り返ると、後ろ手に何かを隠して、歩いてくる川上先生がいた。


わざと、気付かないふりをして。

うつむいていたら。



「はるちゃん。」



そう言って、川上先生は。

私が渡したメッセージカードを、裏返して机の上に置いた。



「先生、ありがとうございます。」


「……ん。」



それだけだった。

先生はまた、いなくなってしまって。



それを裏返すと。






横内晴子さんへ


『生物は生きているだけで素晴らしい』


            By.川上裕一

卒業おめでとう。
今後の活躍を、心より期待しています。






By.って何よ。

なんだか、笑えた。

笑えるけど、涙が出てくる。


本当に、先生らしいと思った。

先生らしい、メッセージだった。


ほんとに、ほんとに嬉しかった―――