センセイの白衣

夕子とは、「食い修めの儀式」を行うことになっていた。

それは、まず、学食に行くこと。

それから、高校の売店のから揚げを食べること。

そして、高校に売りに来るパン屋さんの、パンを食べること。


その三つだ。


今までは、授業が終わってすぐにいかないと、売り切れてしまったりして。

あんまり食べたことがなかった。

だけど、今は自由登校だから。

好きな時間に抜け出すことができる。


もちろん、他の学年は授業中だから、むやみに歩き回ることは禁止されているんだけど。


私と夕子はいつも、共犯者のようにこそこそと教室を抜け出して、パンやから揚げを手に入れていた。

だけど、そんな日々ももうすぐ終わりだ。

私たちは、食い修めの日を決めて、その日には必ず食べようって、約束していた。


そんな日のこと。

いつものように、小部屋で先生と話していた私。



「晴子、カレンダーある?」


「へ?手帳なら。」


「見せて。」


「はい。」



渡そうとしてはっとした。

これは、見られたら恥ずかしい―――



「やっぱり、ダメです。」


「何で!」


「何でも!」


「見せて!」


「だめ!」


「そんなに見られちゃ困ることが書いてあるのか!」


「とにかくだめです!」



必死に守っていたのに、先生に手を引きはがされて。

結局手帳をとられてしまった私。



「もうあとちょっとだなー。」



手帳を見ながらそう言った先生の一言に、騒いでいた私の心が、すっと冷えた。


そう。

本当に、あと少し。

先生と、こうして笑い合えるときも。

もうすぐ、終わってしまう―――



「なんだこれ。食い物の予定ばっかだな。」


「もうっ、先生!!!」



奪い返そうとした私。

でも、腕に力が入らなかった。

もうすぐ、もうすぐ終わってしまうこの日々。


先生と私の間には、何もないけれど。

でも、何もないと言ってしまうのは、あまりにもさびしくて。


確かなものは何もなくてもいい。

約束なんて、いらない。

でも。


先生と過ごした日々が、思い出になってしまうのがつらいよ―――