「せんせ、今日もたくさん、論述持ってきましたよ!」


「えー、こんなに?お前、俺を寝かさない気か!」



そう言いながらも、いつだって次の日にはちゃんと、添削してくれた先生。

先生を困らせるのが得意な私は、毎日膨大な量の論述問題を解いて、先生に渡していたね。


先生と私をつなぐのは、私が作ったファイルだけだった。

友達に、病院のカルテみたい、と言われたそのファイル。

それは、いつも私が問題を入れたまま先生に渡して、先生が持って帰って。

次の日にまた、先生から返される。


たったそれだけだけれど、何か嬉しかった。



「ねえ、はるちゃん、あの部屋の中でなにしてるの?」



一緒に勉強していた夕子、という友達が、好奇心にあふれた目で私に訊いた。



「え、添削してもらったやつ返してもらって、それと、雑談?」


「なんか、それヤバいと思う。」


「へ?」


「川上先生、はるちゃんのこと好きなの?」


「そんなわけないじゃん。」



そう言っていたのに。

夕子は、ある日先生に尋ねたんだっけ。



「はるちゃん、おいで。」



先生が手招きしたとき。



「川上先生って、どうして晴子ばっかり呼ぶの?」


「え……いや、……いいの。ほら、はるちゃん。」



歯切れ悪く、何も答えなかった先生。

あの時、嘘でもいいから何で、ちゃんと答えなかったの?

夕子は、誰かに言ったりする子じゃないから、その点は安心していられたけれど。