「お前ら・・・」


「み、水嶋くん!?」


私の前を立ちふさがっている大人数の女子たちを見て、水嶋は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに眉を寄せて女子たちの間をくぐり、私の目の前で立ち止まった。


「お前・・・びしょびしょじゃん。
大丈夫か・・・?」


「うん。
まぁ、なんとかね」


体が熱くて若干頭もクラクラするけど、心配かけないように小さく笑ってみせる。


すると水嶋は目を細めて優しく笑った。


・・・気がした。


「もう少しがんばってくれ」


「うん・・・」


秋が近づいてきて、少し肌寒くなったからなのか、水嶋は着ていた制服の上を脱いで私の肩にかけた。


自分の上着が濡れるのにも関わらず。


そして女子たちの方に向き直る。


「俺言ったよね?
もうこいつに近づかないでって。
俺約束破る奴も嫌いだけど、こういうことする奴、もっと大嫌いなんだよ!
俺の前から消えろ!」


「で、でも水嶋くんはこの子にたぶらかされてて・・・」


「はぁ?
俺のこと何も知らねぇくせにわかったようなこと言ってんじゃねぇよ。
うぜぇ」


「違う・・・。
こんな水嶋くん、私たちは知らないわ!
どうしたって言うの!?
前の優しい水嶋くんに戻ってよ!
こんな子が友達だなんて嘘よね!?」


「・・・はぁ。
悪いけど、これがホントの俺なんで。
偽りばっかの姿しか見えねぇ奴に、本当の俺を見ようとしない奴らなんかに、俺の友達悪く言われる筋合いねぇだろ。
つーか、誰を友達にしようが俺の勝手だろうが」


「あぁ、こんな水嶋くん信じない。
あの優しくて笑顔の絶えない水嶋くんが今私を睨んでるなんて・・・。
絶対に信じない!」


「直美!?」


直美は走って教室から出ていき、その後を他の子達も付いて行った。


「二度と俺らの前に現れんな!」


最後に水嶋は、最後の女子が出て行く前に叫んだ。


一番後ろの子がチラッと振り返ったけど、すぐ前を向いて走って行った。


でもその目は、怯えているような目立った。


「水嶋、これで女子の人気も落ちたね・・・」


「上等。
これでめんどくさい女子たちが周りからいなくなるんだ。
こんな嬉しいことはねぇよ」


「そんなこと言ってると、大切な人できなくなるよ・・・」


「あー、まぁ、そこは問題ないんだが、相手がなー」


「?」


よくわからなかったけど、そういえば水嶋に友達宣言されたことを思い出した。


「ねぇ、水嶋・・・」


「ん?」


「私たち、友達?」


「え?
・・・あー、うん。
友達」


「そっ・・・か・・・」


そっか、私たちもう友達だったんだ。


なんでだろう、なんだか胸のあたりが暖かい感じ・・・。


体が暑いからかな?


なんか、ホッとしたら眠くなってきた・・・。


「まぁ、今はだけど。
・・・って、おい。
聞いてるか?」


「・・・・」


「吉野?
・・・あっつ!
は?
熱!?」


かろうじて意識はあるものの、返事をすることができない。


それに水嶋はさっき何をいったんだろう?


聞いてるかって、何を?


徐々に薄れていく意識の中で、おでこに当てる水嶋の手のひらが冷たくて、すごく気持ちよかったのを最後に、私は眠りへと落ちていった。