「これで目が覚めたでしょ!?
このビッチ!」
あー、最悪だ・・・。
ポタポタと髪から垂れる雫を見ながら思う。
そして私は理解した。
水をかぶらされたんだと。
ホント最悪だ。
漫画とかではよくあるシーンだけど、ホントにやる?
普通。
ホントとことん腐ってると思う。
しかもさっきからビッチビッチとやかましい。
私はファーストキスもまだな純白な女子だっつの。
ふつふつと腹のそこから煮えたぎるような怒りが湧き出てくる。
あー、私勝てるかな?
この人数と。
こんなことになるなら、柔道とか空手とかしとけばよかったなー。
そんなことをボーと考えていた。
「何?
怖じ気づいて声もでなくなった?」
「可哀想に、震えてるじゃーん」
水をかぶらされてから一言も発しない私に、女子たちは怯えてるんだと思ってるのか、甲高く笑いだした。
まぁ、確かに震えてはいるけど、それは怖いからじゃなくて、怒りからんですけどね?
そこんとこそこら辺の女子と一緒にしないで欲しい。
今私は怒りMAXなのだ。
いつ反撃しようか様子を見てるだけだ。
怖いとかそんなもの・・・。
「ねぇ、何か言ったらどうなの?」
直美の手が、私の髪に触れようとした瞬間。
「吉野ー!!」
静かな旧校舎に響く声が聞こえた。
「吉野、どこだ!」
聞き覚えのある声。
この件で一番心配していた人の声。
ずっと、嫌いだって思ってた人の声。
「水・・・嶋ー!
水嶋ー!!」
声の出る限り叫ぶ。
体が濡れているのに何故か体温が暖かく感じるせいか、私は今まで出したこともないくらいの大声で叫んだ。
「吉野っ!」
そのせいもあってか、思ったよりも早く、水嶋は私のいる教室に辿り着いた。



