もう日がくれ街路樹が並んだ道を歩いて行く。
「暗いなー。
母さんに何も伝えてないし、怒られるかなー」
ケータイの画面を見ながら歩いていると、遠くの方からおーい、おーいという声が聞こえてきた。
立ち止まってキョロキョロと見回してみたけど、それらしき人はいない。
まぁ、自分じゃないだろうと思って気にせずまた歩き始めた。
でも、いつまでたっても声は聞こえてくる。
声の主は後ろにいるみたいだった。
振り返ると、息を切らした男の人がいた。
「や、やっと追いついたー」
そう言って私の前で立ち止まって二カッと笑う。
「えっと・・・」
誰?
いや、なんか見覚えはあるんだけど、パッと出てこない!
「あー、俺のことわかんないよね?」
「残念ながら・・・」
「だよね。
俺、瀬戸口貴斗(セトグチ タカト)っていうんだ。
今日の合コンに来てたんだけど・・・」
合コン?
そういえばよく見たら服装が同じ学校の制服だ。
てことは、あの中の一人ですか!
水嶋しかわからなかったからなー。
「で、その瀬戸口くんとやら。
なんでこんなところまで走ってきたの?」
直球に質問する。
すると瀬戸口くんはグーをした手を私の前に出してきた。
「両手、出して」
「こう?」
グーをした手の下に両手を広げてくっつける。
何か落ちてくるのだろうか?
バラバラっと落ちてきたのは小銭だった。
「64円。
割り勘したお釣り」
「え?
・・・このためだけに走ってきたの?」
「ん?そうだけど?」
「・・・ぷっ。
あはははは!!
おかしー。
普通こんだけのために走ってこないでしょ!
ていうか、明日も学校あるんだから、明日でもいいのに」
「あっ、そっか!
吉野さんって頭いいね」
「いや、瀬戸口くんが頭悪いんだよ」
「「・・・・」」
「「ぷはっ!」」
二人して道の真ん中で笑い合う。
こんな面白い人があの中にいたんだ。
水嶋ばかり気にせずもう少し他の人と話をしてみるもんだったと今更思う。
「わざわざありがとう。
瀬戸口くんみたいな男子は普通に好きだな」
「え?す、好き!?
あ、ありがとう」
「あっ、勘違いしないでね!?
友達とかに言うそういう好きだから!」
「う、うん。わかってるよ」
はにかみながらも照れている瀬戸口くんを見ると、なんだか私まで恥ずかしくなってきた。
「あ、じゃあ私はこれで・・・。
また明日ね!」
「え?
家まで送って・・・」
最後まで聞かない内に、私は走ってこの場を離れた。
何これ、何これ!
心臓がドクドクと高鳴ってうるさい。
胸が苦しい。
身体中が熱い。
何これ。
まさか私・・・。
恋しちゃった!?



