「それでさ、吉野に聞いて欲しいことがあるんだ」
「聞いて欲しいこと?」
「うん」
未だに氷で頬を冷やしながら椅子に座った前っちゃんの方を向く。
「あのストーカーの件で、誰が黒幕かわかったんだ」
「黒幕?
つまりあのストーカー捕まったってこと?」
私たちの話を聞いていた瀬戸口くんも会話に参加する。
「ううん。
ストーカーの正体はわからないけど、そのストーカーをうまく操ってた人物がわかったんだ」
「どこでそんな情報を・・・」
私としては今は黒幕より、その情報をどこで入手したかの方が気になるんですけど・・・。
「あぁ、これ?
情報部から貰ったんだよ。
今不審者の噂が結構立ってるだろ?
あれ、情報部が流したんだ」
「なんの為に?」
「そりゃあ吉野の為。
こうやって不審者情報が広がれば、女子たちなんかは警戒するから、怪しい奴がいればすぐ通報される。
だからあいつらは下手に手出しできないだろうと思ってね」
「へー、いろいろ考えてるんだ」
「当たり前」
関心する瀬戸口くんにドヤ顔してみせる前っちゃん。
そのドヤ顔がなければすごくかっこいいんだけどなー。
「で、その黒幕って誰?」
「あぁ、それね。
まぁ今日吉野も瀬戸口も会ったみたいだから話が早いかも」
会った?
今日私たちが?
それって・・・。
「水嶋に群がる女子。
の、一部なんだけど、その中の直美って奴が主犯らしい」
「直美っ!?」
そんな、まさか。
「知ってるの?」
首をかしげる瀬戸口くんに、私はうつむいた。
「知ってるもなにも、さっき私と会ってたし、私を叩いた人だよ・・・」
「「えっ」」
二人の声が重なる。
「あいつが吉野に手ぇ出したの!?
あぁ、もうこれは死刑もんだわ」
「えっ!?」
「そうだね。
さすがにその人はもう許されないよ」
前っちゃんの死刑という言葉に驚いていると、瀬戸口くんも賛同したように頷いた。
「待って待って!
何死刑って!?」
「で、どうする?
あいつ」
「どうしようか。
僕らでやり返す?」
「ねぇ、話し聞いて!?」
2人は私の言葉も聞かずに二人だけで話を進めていく。
お願いだから、大事にしないでー!



