「吉野!?」
「あ、前っちゃん」
掃除が終わるチャイムが鳴った数秒後、保健室で頬を冷やしていた私の元に、焦った顔をした前っちゃんが瀬戸口くんと一緒にやってきた。
「大丈夫、吉野!?」
「うん、大丈夫。
ちょっと痛いだけだから」
「そう・・・。
話は全部瀬戸口から聞いたよ。
あいつら、等々吉野に手ぇ出しやがって・・・。
許さねぇ」
「ま、前っちゃん落ち着いて!?
口調が荒くなってるよ!」
「おっと。
でもホントに黙ってるってことはしないから。
私は私のやり方でやり返させてもらう」
「や、やり返すって・・・。
ホントに大丈夫だから。
そんなに心配しなくても・・・」
苦笑いで、険しい顔をして舌を向く前っちゃんの腕に触れようとした時、前っちゃんはバッと顔を上げた。
「心配するよ!
だって大切な友達が傷つけられたんだよ!?
それを黙って見てるほど私は落ちぶれてない!
吉野のことをこんなに思ってなかったら、心配だってしてないし、友達だってやってない!
私は吉野のことが大好きなんだから、心配するのは当たり前じゃん!」
言い終えてふーふーと、肩で息をする前っちゃんの言葉に心打たれて、私は泣きそうになった。
「ありがとう、ありがとう。
ごめんね、ごめん」
「バカ吉野・・・。
こんなこと滅多に言わないんだから」
ギュッと優しく抱きしめられる。
それに答えるように、私も前っちゃんの背中に手を回して抱きしめ返した。
「前っちゃん、私も大好き」
「バーカ、知ってるっての」
二人して笑い合う。
前っちゃんが友達でいてくれて本当によかった。
ずっとずっと友達でいて欲しい。
抱きしめる腕に力を込めた。
そんな私たちを、瀬戸口くんは優しく微笑んで見ていてくれた。



